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サッカーを楽しむことを伝えていく(KAIHAN CUP 2025を終えて)田中 隼磨 監督インタビュー

2025.05.09

田中隼磨(たなか はゆま)監督

長野県松本市出身の元プロサッカー選手。
「横浜Fマリノス」「東京ヴェルディ」「名古屋グランパス」「松本山雅」で活躍し、現役時代のポジションは右ウイングバック、右サイドバック。元日本代表として国際舞台でも経験を積み、2022年に現役を引退。その豊富な経験と子どもたちへの情熱を活かし、現在はSea Sail Unitedの監督として若い才能の育成に力を注いでいる。


SeaSailUnitedの監督で、元プロサッカー選手として活躍してた田中隼磨監督にお話を伺いました。
監督としての理念や日々の指導法、そしてスペイン遠征で見えた子どもたちの成長など、サッカーを通じて伝えたい価値観と、未来を担う子どもたちへの熱い思いを語っていただきました。

※このインタビューは2025年3月24日に実施しました。


子どもたちの夢をサポートしたい

サッカーを通して、子どもたちの夢をサポートしたい。子どもたちが世界に羽ばたく姿を近くでサポートしたい、という思いが、元々強くありました。そして、サッカー国際ジュニア大会を主催されている海帆さんの想いと情熱に、とても共感するところがあり、海帆さんの期待に応えたい、という想いから決めました。

チームの指導理念と目標

小学生の年代に、サッカーの楽しさ、サッカーを楽しむことを伝えていきたいです。私もプロとしてプレイしていましたが、サッカーは、楽しいだけでは勝つことができないんです。楽しいだけではプロにはなれない、その先にある、サッカーの厳しさや、ピッチ内外の規律なども、大切にしていきたいと思っています。
サッカーだけに限らずスポーツに対して、正々堂々と最後まで諦めずにひたむきに戦う姿というのは、日本の素晴らしいところだと思うので、そういう姿勢や想いを子どもたちに伝えています。そしてやはり、相手をリスペクトすること、敬う心というのを、選手たちには大切にしてほしいと思っています。

チームの理念と一緒で、やはり子供が楽しくプレイすること。ただ楽しいだけじゃなくて、その中にはルールがあって規律があって、そういうこともしっかり守りながら、仲間のために、そして自分のためにプレーして欲しいですね。また今回スペインに来ましたが、日本で応援してくれている、お父さん、お母さんのために、サポートしてくれている、色々な周りの人のために感謝をもってプレーすることを伝えていくことに、こだわってますね。

子どもたちの将来を長い目で見守る

サッカー指導の本質は、子どもたちの「人間力」を育てることにあります。技術だけでなく、互いを尊重し合える信頼関係を築くこと。スペインでの貴重な経験を糧に成長し続けてほしい。未来の日本サッカーを担う子どもたちの可能性を信じ、長い目で育む姿勢を大事にした指導を目指しています。

選手の将来を見据えた長期的な育成計画として、今回、スペインに来るだけではなくて、このスペインの経験を活かして、子どもたちのこれから先の成長をサポートしていきたいと思います。この先の子どもたちの将来を応援してますし、今回の大会だけで終わらずに、先々も繋がるように指導していきたいなと思ってます。

信頼関係をしっかり選手1人1人と、築いていく。話して向き合うことによって、その選手がどんな性格で、どんな技術や身体の特徴を持ってるのかを、理解していきます。
また、練習の中でも、選手それぞれの性格を知ったり、プレーを知ることをしっかり意識して指導してます。

子どもたちと信頼関係を築くことで、指導者である私が、子どもたちの見本となるような言動をしないといけないと思います。子どもたちは、指導者の背中を常に見ているので、言葉遣いだったり言動はとても気をつけています。まだまだ小さい年代なので、何が正しくて、何が間違いなのかということから分からない子どもたちも多いので、まずは最初に子どもたちに考えさせています。それを聞いた中で、見本となる姿を提示しながら、指導していくよう、心掛けています。

選手の個性を伸ばすための工夫は、信頼関係ですよね。信頼関係をしっかり選手1人1人と、築いていく。話して向き合うことによって、その選手がどんな性格で、どんな技術や身体の特徴を持ってるのかを、理解していきます。
また、練習の中でも、選手それぞれの性格を知ったり、プレーを知ることをしっかり意識して指導してます。

私たちが子供の頃だった時と同じような、自分がしてもらったような指導をするのではなくて、今の新しいやり方もあると思います。自分たちも常にアップデートしながら指導者として成長していかなければならないと感じています。
ただ、基本的な土台というのは、礼儀正しさもそうですが、規律を守って、最後まで諦めずにひたむきにプレーするっていうところは、いつの時代も変わらないと思います。
そういった志の部分は、土台としてしっかり伝えていきたいなと思います。

試合での勝利も大事ですし、選手の育成も両方大事なので、バランス配分は特に意識していません。
両方とも同じように、100パーセント、大事ですので。試合に勝つことも大事ですし、選手1人1人が、チームのために戦って個人としてのレベルを上げていく、というのは両方大事なので、同じぐらい大事なことですね。

やはり信頼関係を大切にしています。選手との信頼関係、スタッフ同士の信頼関係。お互いが信頼関係を築いて、お互いがお互いをリスペクトし合いながらチームを作っていかなければ、勝てるチームは作れないと思います。選手同士もそうですし、選手とスタッフとの関係も、信頼関係を築いてマネージメントすることは意識してます。

親元を離れて、ピッチ内外で、生活するために必要な部分がたくさんありますよね。
今回、U-8とU-10の子どもたちが来ていますが、我々が、やることを伝える前に、U-10の子どもたちが、U-8の子供たちの面倒を見たり、サポートしてる姿を見かけることがあり、とても嬉しい気持ちになりました。

日本にいる時は、親が近くにいて、周りに日本語が通じる人が当たり前にいますよね。ですが、スペインでは日本語が通じないですし、子どもたちもスペイン語も喋れるわけではないです。
レストランで朝食を食べるときに、お店の人にどういう声がけをして、どういったものが欲しいのかということを伝えないと、食事も食べることができない環境。その中で、子どもたちはいろんな工夫をします。例えば、英語で喋ったりとか、スペイン語を覚えたりだとか、数字で1とか、あと少し欲しいっていうのを手で表現したりだとか、自分で考えて、対応していく姿を見ることは、とても嬉しいです。

スペインと日本の違いは感じます。能力はどのぐらい違うかはわからないですが、文化も違いますし、指導方法も違います。日本とスペインでどちらがいいか悪いかはないと思いますが、スペインの素晴らしさ、指導の素晴らしさを学んで、日本に持ち帰って、我々は伝えていかなければいけないなと思ってます。

何が勝っている、何が負けているというのは、細かく言ったらちょっと答えるのが難しいところはありますね。サッカーの歴史と伝統は大きく違うので、日本はスペインのサッカーに対する情熱とか、サッカーのピッチ内外での振る舞いっていうのは全て見習わないといけないと思います。
でも逆に日本のマナーや礼儀などのリスペクトの精神というのは、スペインでも評価されてる部分はあるので、そこはスペインにも日本の素晴らしさっていうのは伝えていきたいと思いますね。

スペインでの試合前後のミーティングでは、このチームの理念である「ひたむきに最後まで諦めずにプレイすること」「相手にリスペクトの気持ちを持ってプレイすること」を強く伝えました。
そして、このスペインの地で夢を追いかけて、夢に向かっていくことに関して、楽しんで挑戦すること。そこはほんとに変わらずにずっと伝え続けてます。

試合中に、コーチが選手に対して強く求めてる姿勢を感じました。
1つ1つのプレーに対して、具体的に何が良かったのか、悪かったのかということを、より具体的に試合中でも伝えているということはありますね。

スペイン遠征後のビジョンは、日本に戻って、このスペインで経験したことを日本のサッカー界に、我々が経験したスペインの良さを伝えていきたいと思います。これから子どもたちがどう成長していくか、どうこの先に向かっていくのかということも、見ていきたいという思いはあります。

出発する前にお父さんお母さんへお伝えしましたが、スペインには観光に行くわけではないですし、旅行に行くわけではないです、と。
よく親御さんが「子どもたち同士、仲良くしなさいよ」とか「喧嘩しないんだよ」などと言ってる姿を見かけましたが、別に仲良くするためににスペインに来てるわけではないんですよね。喧嘩するのが必ずしも悪いわけではないので。自分の思ってることを主張しあって、そこで、喧嘩になるのは仕方がないと思うんです。自分が思ってることを相手に伝えることは、喧嘩でもなんでもないですし、そこはコミュニケーションだと思うので、そのようなところは親御さんにも理解してほしいと思います。

日本にいる時、親御さんが、ああしなさいとか、こうしなさいとか、いろんなことを具体的に提示してるのをよく聞くんです。でも、私が監督として指導してる時は、子どもたちに少しでも自分で考えて行動させることを意識しています。それで間違った行動をすれば指摘して、何が正しいかというのを伝えます。

まずは何が正しいのかを、自分で考えて行動させるように促して、必要な時にサポートすることを大事にしています。なので、親御さんもサポートはするけど、なるべく、ああしなさいこうしなさいではなくて、自分でしっかり考えて行動できるような子どもたちに育てていただけたらな、と思っています。