2025.06.10
代表取締役 小山幹雄
1978年創業の金属部品試作メーカー
人材や設備への投資を惜しまず技術革新に挑戦し、自動車業界の厳しい品質基準に対応してきました。昭和の名工作機と最新設備を融合させ、自社一貫生産体制で高品質なものづくりを実現。
KAIHAN CUPの優勝トロフィーを製作していただいた岩井工業さんにトロフィー製作の裏側や仕事にかける想いを語っていただきました。岩井工業さんは、金属加工のプロフェッショナルで自動車やバイクの部品の試作品を作ってます。自社の技術の高さを知ってもらおうと始めたサッカーボール製作きっかけに、KAIHAN CUPのトロフィー製作を引き受けていただきました。モノづくりにかける想いが子どもたちの夢や笑顔につながれば嬉しいと、笑顔で語ってくださいました。
※このインタビューは2025年4月24日に実施しました。
トロフィー制作を引き受けたきっかけ
うちの溶接の技術を知ってもらおうと思って、金属でサッカーボールを作っていたんです。これ、実は結構な技術が必要なので、こういった綺麗な溶接ができる会社なんですよっという技術をアピールするために作ってたんですね。
それを写真に撮って、私のスポーツ業界に精通してる知り合いに、サッカーボール作ったんだけどって言ったら、岡部さんにすぐ写真送ってくれて。そうしたら、岡部さんがこれいいなっていうことで、どんどん話が進んでいったんです。
たしか、それが2024年の12月12日だったんですよね。で、大会が2025年1月25日という話だったんで、1月24日までに作らなきゃいけないということで、相当な急ぎ仕事になっちゃうねぇ、なんて社員と話をしていたんです。
それで急いで吉川さんたちと打ち合わせをさせてもらったんです。そこで、サッカーボールを作ったのは元々、技術を知ってもらうためのものだったんですが、そこに価値を感じていただいて、モノとして扱っていただけたっていうのが本当に嬉しかったのがスタートでしたね。
最初にサッカーボールを製作した理由
一番、溶接が難しいっていうものにチャレンジしたかったからですね。サッカーボールを作るには、ほんとに均一に溶接していかなければいけないんです。さらに、溶接をすると熱が加わるので、冷めるときにどんどん歪んでいくんですよ。ですので、その歪みも考えながら溶接していかなければならないんです。面積が大きいと、どんどん歪んでっちゃうので、最後に組み立てる時にうまく組み立てができないなんてことになってしまうんです。そうならないように、歪みや、素材の厚みなど、いろんなことを考えて製作しています。
トロフィーを作るにあたって最も重視したポイント
溶接技術の高さは、色々な会社さんと比較しても、かなり自慢できるモノじゃないかと思っているので、溶接の綺麗さというところを見てもらいたいと思っていますし、重視して製作しています。
ワールドカップ杯と同じ重さを持つKAIHAN CUPトロフィー。その均一な溶接と美しい曲線の裏には、想像を超える職人の苦労と技術がある。金色に輝くメッキの下で、歪みと闘いながら精密な形を追求した職人たちの誇りと執念に迫る。
デザインや素材に工夫されたことはありますか?
はじめは子どもたちの大会だということで、子ども用の大きさを考えていました。大きくなると重くてわぁ〜って持ち上げられないじゃないかと思いまして、少し小ぶりのデザインにしたんですよね。ただ、吉川さんから子どもたちにホンモノの重さを感じてもらいたいので、ワールドカップ杯のトロフィーと同じ重さ(6.175kg)にしたいと要望を受けまして、重さや高さのバランスを考えて今のデザインになりました。あと、小さくすればするほど作るのが難しいんですよね。ゴルフボールみたいにもっとちっちゃくできないの?って言うと、ふざけんなと社員に怒られました(笑)
制作過程で最も難しかったところ
やっぱり溶接ですよね。どうやって歪まないようにしていくかという点と、強度の部分ですかね。部分的に弱かったりすると丸くするときに破裂してしまうので、そうならないように気を使いながらやっていくのはとても難しいですよね。
たぶん、普通の人がやると、もっとものすごい汚くなると思いますし、1度や2度じゃできないと思います。うちの職人は職業訓練の溶接の先生なんで技術がとても高いんです。
製作中の予想外な困難や挑戦
元々、メッキをかけないで溶接が見えるような状態で見せていたので、それを金のメッキにしようというのは初めての経験でしたね。我々、金メッキの技術を持ってませんので、それをお願いするところを探さなくちゃいけなかったのと、短期間の納期で、ということだったので苦労はしましたね。
我社の社員が、もう色々なところに出向いては、テストピース作って、テストしてとの繰り返しでした。あと、銘板をプリントするという技術もないので、銘板屋さんを探しに行ったりしたことも苦労しました。
2024年12月12日から製作を開始したのですが、すぐにお正月休みで9連休だったので、工場が止まってしまうんですよ。でも、絶対これは引き受けようとみんな言ってくれて、社員みんなが動いて、金メッキ屋さん、銘板屋さんにも協力していただいて、正月休みも決まってましたから、スケジュールはかなり焦りながら進めました。
でも、金メッキや銘板の協力工場さんも探すこともできましたし、すごく我々も勉強になりました。子どもたちのサッカーボールのトロフィーなんですと伝えると、「それは夢があっていねぇ」と言っていただいて、短納期なのにとても協力的に動いてくれたんですよね。
完成までにかかった期間
2024年12月12日にスタートして、2025年1月25日まででしたので、お正月休みに入りましたから、実質1ヶ月弱ぐらいで制作しましたね。
自動車部品試作をつくる岩井工業さんのはじめての自社の製品を世に送り出す。子どもたちの喜ぶ顔を思い描きながら完成させたトロフィーは、岩井工業にとって新たな挑戦の始まり。日本のあたたかいモノづくりを世界に伝え、次の世代に伝える決意が込められている。
今回トロフィー製作を受けて新たな発見や感じたこと
そうですね、我々はいつも下請けで車とかバイクの部品の試作などを作らせていただいてるので、図面が来て、それを設計図通りにきちっと作るっていうことには、ものすごく長けてるんですね。
でも、トロフィー製作は自分たちで何か新しい価値を生み出して、それをお客さんに喜んでいただくことで、本当にはじめての挑戦だったんですね。
そのトロフィーを見た子どもたちが、「めっちゃ喜んでたよ!」って聞いて、何とも言えなかったですよね。嬉しくて。これがモノづくりの原点だと思うんですよね。
自分たちがつくったものがお客さまのところに届いて喜んで頂けたっていうのは嬉しかったです。我々はいつも車の裏側とかバイクの横についてる部品の試作品を作っていますから、あんまりお客様の顔が見れないんですよね。B to Bのビジネスなので。
でも、今回のトロフィー製作は子どもたちの笑顔が想像できるじゃないですか。だから、我々もただ下請けをしていくだけじゃなくて、自社開発商品っていうのも強めていかなければという思いも出てきて、すごくいい刺激、経験になったなと感じています。
最後に、このトロフィーを手にする優勝チームや子供たちにメッセージ
今、どんどん海外に出ていくのも当たり前だし、我々の時代は小学生のころにスペインに行くなんて考えもしなかったですし、頑張って欲しいですよね。
その一方で、我々のモノづくりはどんどん海外に仕事を奪われてるので、こういう機会をきっかけにモノづくりに興味を持ってもらえたらうれしいです。我々も子供たちに負けないように、世界を目指してる社員もいますから、技術を伝えて、日本のあたたかいモノづくりを伝えていきたいですね。
機械でガッチャンガッチャンと作るんじゃなく、1個1個丁寧に日本の技術の高さや精密さで手で作るあたたかみを子どもたちにも感じてもらえたら嬉しいですね。
また、トロフィーを手にした世界の子供たちにも日本のモノづくりに興味をもってもらうきっかけになれたらなと思います。
これまでの少年サッカーの大会では見られない重厚感ある「本物のトロフィー」。お菓子のオマケのような安っぽさではない「本物のトロフィー」を作った今大会を主催した吉川 元宏のKAIHAN CUPにかけた想いを語ってもらった。「本物のトロフィー」は、目の前の喜びだけでなく、10年後、15年後に本当の価値として子どもたちに感じてもらえるだろう。本物にこだわる理由は、将来の感動のためなのだ。
本物に触れることがとても大切
最初見た時に、おもちゃじゃなく、しっかりしたモノが来たなというのはすごく感じました。今までトロフィーを結構見てきてて、最後に見たのが中学校の県大会優勝トロフィーなんですが、やっぱりここまで立派じゃなかったですよ。やっぱり本物に触れるってすごく大事だと思うんですよね。よくあるトロフィーってお菓子のオマケみたいな感じじゃないですか。
KAIHAN CUPではどこに重きを置いていくのかっていうところで、全部、本物をそろえていくことを大事にしていて、岩井工業さんのトロフィーはそれに見合ったものが来たと思いましたね。
岩井工業さんにトロフィー製作を依頼したきっかけ
ドリブルデザイナーでKAIHAN CUPのプロモーターの岡部さんの紹介ですね。大会のコンセプトとして本物をそろえていくというのを考えていて、トロフィーをどうしようかなと考えていたタイミングで岡部さんから連絡をいただきました。
他の大会とは違いをつけたかったので、本物にこだわってるってところにドンピシャで岩井工業さんを紹介してもらえたので、これは面白いと思ったのがきっかけですね。
「日本のサッカーが弱いのは、もっと上手い選手がやめてしまうから」日本が裕福な国だからこそ生まれる課題に、KAIHAN CUPは本物の感動を生み出す。ワールドカップ杯さながらの国際大会の開催と、職人魂が込められたトロフィーは、子どもたちがサッカーを続ける理由になる。将来的に次のステージの中学校、高校年代でも感動を提供し続けたいという主催者の熱い決意が、日本サッカーの未来を照らす。
本当の価値がわかるのは10年後
多分、彼らがこのトロフィーの本当の価値がわかるのは10年後なんですよ。彼らが10年後、15年後、大人になった時に、何かふとKAIHAN CUPが本物にこだわるっていう思いで作ったってことを知った時に、あ、俺このトロフィーを持ったなって思える、「サプライズ時限爆弾」みたいなものなんですよね。子供たちはこのトロフィーの価値がわからないので。スペインに行った子どもたちも、たぶん今はまだわからないんですよ。
子ども達にスペインはどうだった?と聞いても、「楽しかった」「よかった」しか返ってこないんですよ。(笑)だから、このトロフィーの価値が出てくるのはこの先ですよね。思い出として出てきたときに、本物で作ったんだと知って価値を感じてもらうのは。だから本物でつくるというのは大事にしておきたいんですよ。
ただ、それが何十年って経った時に、このトロフィーの価値をどのように作るかは僕らがKAIHAN CUPをどういう想いで企画したかというところは大事にしていきたいですね。
子供たちにサッカーを続けてほしいという想いがあります。やっぱり日本って裕福なので、上手な選手ってサッカーを辞めてしまうですよ。日本のサッカーが弱いのは、実はもっと上手い選手がいるのに辞めてしまうからなんですよね。
だから子どもたちにサッカーを通して日々の感動を感じて、プロのような感動を感じてもらえる環境を作っていくので、ぜひサッカーを続けてやってほしい、と思いますね。僕らは次のステージの中学校、高校でも、KAIHAN CUPのような大会を開催して、子ども達に感動をずっと提供できる企業として成長し続けていきたいと思っています。